Ⅳ 出産とフラメンコ

 多くの女性にとって人生における大きな出来事はいくつかあると思う。
進学や就職、結婚、そして何度かの出産。
この中でもっとも重大なものは出産ではないかと思う。もちろん就職しない人も結婚しない人も出産しない人もたくさんいるので、これは私個人のひとつの意見ではあるのだけれども。
世の中にはたくさんの仕事や情報があふれ、社会において重要な地位を築いている女性もたくさんいる。だからこそ出産は女性にとって重要な課題になっているのだと思う。
(政治家さんたちには、子育て支援、少子化対策がんばってほしいなぁ・・・)
妊娠、出産、子育てというこのながーいながーい期間、女性は多かれ少なかれある程度の制約を課せられる。
もちろん、子供を産む、母親になる、ということはとても素敵な事だと思う。
でも、授かった命をうれしく思う反面、今まで自由に生活していればいるほど、諦めなければならない事の多さにジレンマを感じた事も正直あった。
私の場合、妊娠する前はほぼ毎日フラメンコに関わり、寝てもさめてもフラメンコのことばかり考え、時間さえあればスタジオに出向き練習する。家族に理解があることをいいことに、家事は10%、残り90%がフラメンコだった。
そんな私は妊娠した。
いまどきありえないぐらい、私の妊娠への理解度は低く、もっとも危険な時期の妊娠初期には妊娠に気づかずガンガン、タブラオで踊っていた。妊娠に気づいてからも体の調子がよかったので以前と変わらずフラメンコしていた。そのせいか、体質かつわりは全くなかった。よくテレビでやっている突然「うっ」となってトイレに駆け込む・・・。あんな状況は今日か明日かとどきどきしていたがとうとう最後の最後までやってこなかった。
そんな私の妊娠ライフは快適なもので、練習量こそは減らしたが通常のクラスはかわりなく続け、気がかりといえば体重管理の厳しい病院だったため、いかに太らずに生活するか・・・ということだけだった。そして、妊娠10ヶ月まで踊り続けた。
うちの教室の生徒さんにも妊娠される方がたくさんいて、よく質問される。「フラメンコ続けても大丈夫でしょうか?」まったく知らない方からメールをいただいたこともある「妊娠したけど、フラメンコ続けてもいいですか?」などなど・・・。「妊娠したことはうれしいけれど、クラスのみんなから遅れをとるのが心配」という内容がほとんど。きっとみんな「大丈夫ですよ!フラメンコは妊娠中でも影響はありません!」そういう返事を期待しているんだと思う。でも、こんな私が言うのもなんだけれど、手放しで「大丈夫!」なんていうものはないと思う。ただ私が病院の先生に言われたことは「妊娠は病気ではないのだから、今までやってきたことを全く辞める必要はありません」ということだった。たとえばそれがフラメンコだったのなら100%の力でクラスを受けていたのなら50%ぐらいに落とすとか、無理をせずちょっとやりすぎたかな?と思ったら何を置いてでもしっかり休む勇気を持つとか。
フラメンコに関して言えば、いくつになっても続けていけるものだと思う。確かに若い頃にしかできないテクニックやスピードなんてものはあるかもしれない。でも、年相応のフラメンコができるようになれると思う。妊娠期間なんてほんの10ヶ月。あせらず、その時々でできる事(CDを聞いて耳を鍛える、パルマの練習をする、振り付けを考える、いろんな舞台を見に行く)でレベルアップをはかる、というのはどうでしょう?
今、妊娠されている方、これから妊娠しようと思っている方、元気な赤ちゃんを産んでくださいね!そして、次世代を担う?!フラメンコベビーを育てましょう(笑)


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© 吉田悦子フラメンコスタジオ